活動報告

セミナー・レポートサマリー 96

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■第1回定例セミナー・レポート 平成14年6月5日
「埼玉県戦略的環境影響評価実施要綱について」

講師:
埼玉県環境防災部環境推進課
環境影響評価担当副参事 江原洋一

 埼玉県では、平成14年3月に「埼玉県戦略的環境影響評価実施要綱」が制定され、平成14年度から施行される。東京都においても、「総合環境アセスメント制度」の導入が試行され条例化される動きがあるが、計画段階でのアセスメントについて、要綱を制定し、制度として実施するのは埼玉県が初めてである。
 本要綱に基づいて実施される「戦略的」環境影響評価は、計画策定者が対象となる事業の計画立案段階において、当該計画が及ぼす環境影響の調査・予測・評価を、関連する社会経済的影響の推計と連携しつつ行うことをいう。この手続きを経て得られた結果(原案)は、事業計画に十分反映されるとともに、その後、さらに環境影響評価条例に基づく事業アセスの対象となる。対象となる計画は、埼玉県環境影響評価条例の対象事業のうち、県(一部、市町村を含む)が策定する計画であり、主な手続き内容は、計画書の提出、報告書の提出およびこれらにともなう公告・縦覧、説明会、公聴会である。
 本アセスのとりまとめに関する特徴的な点としては、(1) 事業計画の複数案が比較検討されること、(2) 当該対象計画を実施しない場合における環境の状況の推移についてとりまとめること、(3) 環境影響に対する評価ならびに事業効果、社会的な影響など社会経済要素についての検討が行われること、(4) 個々の原案毎に総合評価を行うことなどがあげられる。
 現在、埼玉県では本アセス実施のための「技術指針」および「技術指針実務参考」を作成中とのことである。また、第1号審議案件として「地下鉄7号線延伸線基本計画」(計画策定期間:平成14年度〜16年度)が予定されているという。複数の原案をどのように報告書の中でとりまとめるか、あるいはどのようにして総合評価を行うかなど、非常に興味深い点が多い。第1号審議予定案件の経過を期待をもって注目していきたい。

(レポーター:(株)東京久栄 上田壽和子)

■第1回定例セミナー・レポート 平成14年6月5日
「自動車NOx・PM法の施行について」

講師:
環境省環境管理局自動車環境対策課
課長補佐 水野 理

 昨平成13年6月に自動車NOx法の改正法である自動車NOx・PM法が成立し、さらに本年4月には、総量削減の基本方針が閣議決定され、総量削減計画の策定や総量削減に関する目標ならびに自動車単体対策の強化、車種規制の実施、低公害車の普及促進など、基本的事項が定められた。この内容をめぐり、水野課長補佐から自動車NOx法改正の経緯から自動車NOx・PM法の今後の施策の方向性までを解説していただいた。
 平成4年に制定された自動車NOx法は、特別の排出基準を定めての規制(車種規制)をはじめとする施策を実施してきたが、自動車の保有台数、交通量の増大等により、対策の目標であった平成12年度末までに、二酸化窒素に関する大気環境基準をおおむね達成することができなかった。このため、窒素酸化物に対する従来の施策をさらに強化するとともに、自動車交通に起因する粒子状物質についても削減を図るために新たに施策を講ずることが社会の中で強く求められている。近年、ディーゼル車から排出される粒子状物質について、国民の健康への悪影響が懸念されていることから今回の改正は、その点を盛り込んだ先駆的な取り組みといえる。
 なお、この法律には、一定の自動車に関して窒素酸化物や粒子状物質の排出のより少ない車を使用する旨の「車種規制」が盛り込まれており、大都市地域でより進んだ幅広い管理の取り組みがみられる。
 さらに、対策地域内で30台以上の対象自動車を使用する事業者に課せられた、自動車排出窒素酸化物等の排出抑制のための計画書の提出義務は、事業者の自主的取り組みを醸成させる面で大きな効果が期待できる。環境への配慮、人への健康影響、車社会の安全対策を事業理念におくことを通じて事業者の自主的認識を高め、事業者・住民・行政が一体となって安心できる社会を創造していくことが求められている。

(レポーター:東電環境エンジニアリング(株) 川鍋 豊)

■第1回野外セミナー・レポート 平成14年7月4日・5日
「尾瀬自然観察研修会」

 毎回参加者から好評を得ている尾瀬自然観察研修会が、本年度第1回目の野外セミナーとして開催された。初夏の尾瀬ヶ原の自然を、講師3名を含めて参加者総勢25名で観察した。

●第1日目
 午前10時50分に上毛高原に集合し、バスで鳩待山荘に向かった。出発前、東京では曇り空だったが、上毛高原はまさに梅雨の中休みの快晴であった。聞くところによると、尾瀬では曇り空が多いらしく、今回は第1日目から天候に恵まれていたようだ。
 鳩待山荘で昼食をとった後、尾瀬ヶ原へ向けて鳩待峠を下った。途中、左前方に木々の間から名高い至仏山を望むことができ、植生限界や残雪、赤茶色にはりだした岩場が肉眼でもはっきりと見えた。蛇紋岩という、植物にとっては生育しにくい岩盤を持った山であるにもかかわらず、頂上部のなだらかな曲線と初夏の澄んだ青空という背景のためか、非常にやわらかな印象を受けた。
 尾瀬ヶ原の低地に着くと、開けた視界にまず目立ったのは至仏山とは対照的に切り立った上部をいただく燧ヶ岳と、緑の中で点々と黄色く揺れるニッコウキスゲの花であった。尾瀬を訪れるのは今回初めてであったが、小学生の頃歌で聞いていた水芭蕉の花の時期は終わっていたこともあり、想像していた尾瀬とは全く違う印象を受けた。しかしながら、ちょうど初梅雨から初夏という季節の移行期であったため、レンゲツツジ、カキツバタ、アズマシャクナゲなど多種の植物の花を観察することができた。微妙な季節の違いによりさまざまな印象を与えるのも、人々が幾度も尾瀬を訪れる理由であるかもしれないと思った。
 夕食後、元湯山荘にて講師の総合科学(株)小角浩、国土環境(株)新津誠、環境科学(株)瀬野直人の3氏から、尾瀬の植生や湿原の構造についての講義と、尾瀬ヶ原と至仏山の歴史や最近の研究・調査についても説明していただいた。また、自然環境調査を行うにあたって、自然を巨視・複眼的に見ることが大事だという言葉を聞かせていただいた。これは、自然を全体的に見るということ、また一つの対象だけでなく、その周りにある他のものも見ることが大事であるということである。自然環境調査の仕事について間もない新入社員の私にとってはぜひ心にとどめておきたい言葉である。また、小角氏が昭和30年に初めて尾瀬を訪れたときの様子や、その頃と比較して尾瀬の環境がどのように変化したかという話も非常に興味深いものであった。

●第2日目
 尾瀬とかかわって50年近くになる小角氏の強い勧めもあり、自由参加で三条の滝を見に行った。朝5時集合であったが辺りはすでにもう明るく、往路は急な下り道であり、ところどころぬかるんでいたが、全員無事に三条の滝にたどりついた。轟音を響かせる高さ100mの落差は非常に力強く、尾瀬ヶ原の静かな沼と対照的であった。
 2日目の天候は曇り時々雨。昨日と違い、もやの中の幻想的な尾瀬の風景を見ることができた。1日目は午後いっぱいかけて山の鼻ビジターセンターから元湯山荘まで、尾瀬ヶ原の北部を横断する木道のコースをたどったが、2日目は見晴らし茶屋を経由して中央〜南部のコースを歩いた。1日目にも感じたことだが、行けども行けども湿地が視界に広がり、民家ひとつ見えないような場所が日本にもあるのかと尾瀬の広さに感動した。
 しかし、この広い尾瀬を縦断する木道が、湿原を富栄養化させるという問題があるということも教えていただいた。1日目の小角氏の話では、湿原の管理についての研究は実証されている例が少ないということであった。尾瀬の管理や保全にはまだまだ課題が多いと感じた。
 再び鳩待峠に集合し、午後は奈良俣ダムを見学したあと解散した。2日間という短い期間ではあったが、尾瀬の自然を堪能しながら参加されていた諸先輩方と親睦が深められ、またさまざまなお話が伺えたことは大変有意義であった。

(レポーター:アジア航測(株) 磯田真紀)

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