活動報告

セミナー・レポートサマリー 118

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■第1回公開セミナー・レポート 平成19年11月12日
海外の開発事業(特に円借款事業)においてわが国の環境アセスメント技術者が果たしえる役割

講師:
国際協力銀行環境審査室第2班 課長 齋藤法雄

 まず、日本のODAにおける外務省、国際協力機構(JICA)、国際協力銀行(JBIC)間の役割分担とJBICによる円借款の実積と内容について紹介された。
 JBICは、円借款事業における環境社会配慮の確認のための手続き、判断基準および融資対象プロジェクトに求められる環境社会配慮を示した「環境社会配慮確認のための国際協力銀行ガイドライン」を策定し、それを示すことにより将来の融資を期待するプロジェクト実施主体者に適切な環境社会配慮を行うよう促している。JBICは環境社会配慮確認のために関係者の情報を入手するとともに、現地基準・国際的基準との照合等も行う。その結果、適切な環境社会配慮がなされない場合は、融資を行わない。
 具体的な手続きとしては、融資要請段階ではスクリーニングとカテゴリ分類を行う。カテゴリ分類は、セクター、規模、特性、地域による影響度合いを4段階(カテゴリA、B、C、FI)に分類する。融資審査段階では、その分類結果に従い環境レビューを実施する。重大で望ましくない影響であるカテゴリAでは、当該国の手続きを終了した環境アセスメント報告書が要件として求められる。また、融資契約後はモニタリングが義務づけられている。
 ほとんどの途上国には、環境アセスメント制度が存在するものの、調査・予測・評価内容および承認機関のレビュー体制が不十分で、地域住民等の関与が弱い。
 以上より、日本のアセス技術者には、案件形成促進調査(SAPROF)やJBICの環境審査への参加などの役割が期待されている。そのためには、語学力、当該国のアセスメント制度、基準および国際的な基準への理解力が必要で、さらに相手国文化を理解したうえでの辛抱強い協議交渉能力と、日本から途上国側へノウハウを可能な限り提供するといった技術移転マインドが資質として求められる。
(レポーター:(株)大林組 今田慎一)

■第1回公開セミナー・レポート 平成19年11月12日
海外における環境・社会影響評価業務の実態

講師:
日本工営(株)コンサルタント海外事業本部環境技術部 奥田 到

 本発表は、日本のODA案件においてJICAが実施する環境影響評価の事例に関し、その流れや課題を取りあげたものである。
 JICAによる環境・社会影響評価業務は、「開発調査」という事業の計画策定調査の一部として行われる。開発調査は、M/P(マスタープラン)調査とF/S(フィージビリティ・スタディ)調査の2つの調査に分かれており、環境影響評価はF/Sのなかで、社会環境調査と一体的に行われる。まず、スコーピングに先立ち初期環境調査(IEE:Initial Environmental  Examination)が行われ、SEA的に事業の代替案や対策案が提案されることが大きな特徴となっている。また、一連の検討の結果は、環境管理計画、住民の移転計画等、モニタリング計画等の環境・社会配慮計画にまとめられるが、スコーピング段階、環境・社会配慮事項検討段階、最終報告書作成段階のそれぞれにおいて「ステークホルダー会議」が開催され、事業計画と環境・社会のそれぞれの側面に対して配慮事項が議論されることも大きな特徴といえる。
 このように、JICAにおける環境影響評価の実施においては、SEA的な仕組み、当事国の情勢に合わせるための仕組みなど優れたマネジメントシステムが構築されている。しかし、実際の業務実施にあたっては多くの課題や困難があるようである。例をあげると、当事国の指針等は未整備な場合が多く生物情報や公害情報なども非常に少なく科学性の確保が難しいこと、住民参加や情報公開のレベルに明確な指針がなく民主制と公平性の確保が難しい場合が多いこと、再委託先の現地コンサルタントや学識者に経験豊富な優れた人材が少ないこと、日本からの環境・社会配慮団員も単年度から2〜3年の契約が多く継続性の確保が難しいことなどである。これらの課題の克服は、結局現地の団員の努力に委ねられている。
(レポーター:(株)地域環境計画 逸見一郎)

■ 創立30周年記念式典
創立30周年記念式典

社団法人日本環境アセスメント協会は、2008年に創立30周年を迎え、記念式典が1月30日(水)に東京・千代田区ルポール麹町で開催された。会場には主務官庁である環境省、農林水産省、経済産業省、国土交通省をはじめとする来賓のご臨席を得て、協会会員あわせて170名余の参加となった。


 最初に栗本会長が開会の挨拶を行った。記念式典に出席いただいた来賓および関係者へのお礼とともに協会の歴史を振り返りながら、今後の抱負と決意を述べた。

■来賓挨拶

 石野耕也環境省大臣官房審議官は、「環境省では昨年戦略的環境アセスメント(SEA)の共通的ガイドラインをとりまとめ、導入に向けた次の一歩を踏みだした。今後より上位の政策決定段階でのSEAについて検討を進めていきたいと考えている。協会は発足以来、環境アセスメント進展の大きな推進力となってきた。今後とも持続可能な社会の実現に資する環境アセスメントの展開に向けて、なお一層の理解と協力をお願いしたい。」と協会に対する期待を寄せられた。
 西郷正道農林水産省大臣官房環境バイオマス政策課長からは代読により、「農林水産省では、現在バイオマスの利活用の推進、温暖化対策、生物多様性の保全とその持続可能な利用に取り組んでおり、今後持続可能な農林水産業の維持、発展に向け、環境に配慮しながら各種施策を展開していく。環境影響評価や環境に関するコンサルティングの果たす役割はますます高くなるものと考えており、協会はその推進の中核的な組織としてますますの発展を期待する。」と期待の言葉をいただいた。
 中村吉明経済産業省産業技術環境局環境指導室長は、「協会とは社団法人化の際に関わっており、当時のことをつい最近のように思い出す。今後の産業を生かすには環境立国であると思っている。環境問題は注目を浴びており、環境アセスメントも各省庁連携しながらやっていかなければいけない。その際協会の力が非常に重要になると思っているので、今後40周年、50周年へと更なる発展を祈念する。」と将来への期待を寄せられた。
 桑田俊一国土交通省総合政策局環境政策課長は、「国交省では、事業の構想段階からの環境への配慮について、戦略的環境アセスメントを内包するような形でのガイドラインの策定作業を進めているところである。環境をめぐるさまざまな課題のなかで、個々の事業の特性に応じた評価手法の充実、それを支える人材の育成、関係者の密接な連携、交流がますます重要になると考えている。こうした課題に対応するために協会が一丸となって取り組まれることを期待する。」と激励の言葉をいただいた。

■功労者表彰

 当協会の事業推進に多大な貢献をされ、環境影響評価業務に関する技術の向上、知識の普及、技術者の教育に尽力された功績をたたえる功労者表彰が行われた。当協会の発展に貢献された功労者14名に対して栗本会長より表彰状と記念品が手渡された。

[表彰者]
津田宏氏、杉野昇氏、二宮章氏、丸岡大祐氏、鴨居昭雄氏、荒木伸弘氏、吉田秀氏、藤森英水氏、新津誠氏、斎藤洋氏、小澤三宜氏、福島一氏、石瀬壽一氏、上野由紀子氏

■記念行事紹介

 創立30周年の記念行事として作成された「30年の歩み」、「環境アセスメント百選」、「エコロジストの時間」について、それぞれ担当した小委員会から制作の経緯、内容について紹介された。
(レポーター:日本エヌ・ユー・エス(株) 堀内和司)

■創立30周年記念講演・レポート 平成20年1月30日
21世紀環境立国戦略について

講師:
中央環境審議会 会長 鈴木基之

 昨年6月に閣議決定された「21世紀環境立国戦略」の策定にご尽力された鈴木基之会長に、世界の動きとわが国がとるべき今後の方向についてご講演いただいた。
 現在、世界各国で気候変動とその影響が問題になっているのは周知のことである。IPCCの昨年の報告によれば、われわれの選択するシナリオによって将来は違った様相を呈すとされている。環境が保全される枠内で経済が発展できるシナリオをどう作るかが、われわれの課題である。
 ニコラス・スターンがまとめたスターンレビューでは、経済モデルを使った推定のもと、対策をとらなかった場合の将来のリスクとコストか、現在の予防的支出かという問いかけがなされている。これをイギリスは洞爺湖サミットの武器としてくる。一方、わが国はこれからどう準備をするのかが問われており、大きな岐路に立たされている。
 「21世紀環境立国戦略」では、循環型社会、低炭素社会、自然共生社会づくりの取り組みを進め、持続可能な社会を目指すこととし、8つの戦略を示した。われわれは2050年までにCO2の排出量を現状から半減する必要がある。これは一人当たりのCO2発生量を現状の1/6にすることであるが、われわれは昭和30年頃にそのような時代を経験している。その頃に戻るのではなく、エネルギー消費量は半分に抑制し、そのうちの化石燃料は1/3にすることで可能となり、これでどんな生活ができるかを技術開発、社会設計について考えていかなくてはいけない。この戦略のなかで、アセスメントの手法は重要であると考える。私たちの生活のなかで、地域を対象としたCO2の排出量削減のようなアセスメントができないか、21世紀環境立国戦略に関わる国の動きを注目し、そういうところに貢献してほしい。
 講演を拝聴し、われわれ環境アセスメントに携わるものが、この戦略のなかで、どんな役割を担えるのかを考え実践していくことが、今後の重要な課題の一つであると感じた。
(レポーター:日本エヌ・ユー・エス(株) 堀内和司)

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