活動報告

セミナー・レポートサマリー 113

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■ 第1回公開セミナー・レポート 平成18年9月22日
自然環境影響評価技法研究会報告

コメンテーター:
筑波大学大学院生命環境科学研究科教授 渡辺 信

 124名の参加者で満席となった会場はいつになく熱気に満ちていた。発表は、各研究会のメンバーが交代で各パートをスライドショーを用いて熱っぽく説明し、後に渡辺信教授からコメントをいただいた。

●HSIモデル構築に関する研究(その2)

 HEPを用いた陸域(里山域)と海域(沿岸域)における2種類のケーススタディである。海域では、約75haの埋立事業域(小さな島を取り囲む「アマモ場、ガラモ場、干潟」)において、ハクセンシオマネキ、アサリ、メバルを指標種として2つの事業計画案の比較を行った。陸域では、丘陵地での約75haの宅地造成事業において、サシバ、ムササビ、トウキョウサンショウウオ、オオムラサキ、エビネを指標種として4つの事業計画案の比較を行った。それぞれHEPを用いて、よりロスが少なくゲインが多い事業計画案を見いだしている。

●生態系の典型性注目種に着目した環境アセスメントの試み

 生態系の典型性注目種の選定方法として、一次スクリーニングで代表性・数量の豊かさ、時間的安定性の視点からの絞り込みを行い、二次スクリーニングで環境依存性、環境の連続性、調査容易性、住民認知度を基準とする点数評価を行って注目種を選定する方法を提案した。また、ロジスティック回帰モデルを用いた定量評価の試みとして、多変量解析を用いて生息確率をマップ化し、3つのルート案それぞれについて「アカガエル」への影響を比較する手法も提案している。いずれの研究もよく練られたものとなっており、各委員の努力と熱意がひしひしと伝わってきた。
 渡辺教授は、生態系の定量的評価の重要性を説かれると同時に、各研究の熟度の高さを評価された。これらの研究はすでに実践の段階にきており、当協会としても国や自治体の協力を得ながら実際のアセスメントへ導入しつつ、更なる改善を図っていくことを考えるべきであると感じた。
(レポーター:(株)地域環境計画 逸見一郎)


■ 第1回公開セミナー・レポート 平成18年9月22日
コミュニケーション技法研究会・条例アセス研究会報告

コメンテーター:
法政大学社会学部教授 田中 充

●環境アセスメントにおけるコミュニケーターの役割

 わが国では、道路や廃棄物処理施設の建設事業のように、事業の概略検討段階からステークホルダーとのコミュニケーションを実施しているケースがある。コミュニケーションの実施に際しては、事業の種類やその実施段階に応じてステークホルダーの参加レベル(情報入手のみのレベル〜合意形成にかかわるレベル)が異なるため、これに応じたさまざまな手法が要求される。今回の発表は、これらの事例を分析し、事業の実施段階に応じた役割を担うコミュニケーターの必要性を指摘するとともに、わが国でもその専門職の早期導入に向けた課題を整理したものであった。
 一方で、田中充氏の講評で指摘されたように、コミュニケーターの中立性の確保や人材育成といった課題も残されている。これらの課題は研究会で引き続き検討されるが、環境アセスメントを生業とする者として、自らのコミュニケーション技術の向上も求められていることを痛感した。

●地方自治体における環境影響評価方法書への改善提言

 方法書において、事業特性や地域特性に応じた適切な項目と手法を選定し、メリハリのある影響評価を求める自治体の環境影響評価条例が制定されて久しい。
 研究会が、これまでに作成された方法書を分析した結果、一定レベルの項目と手法は選定されているものの、事業特性や地域特性を考慮した内容となっていないという傾向がみられた。また、方法書に対する住民意見が少なく、首長意見も住民意見を適切に反映した内容となっていないことなども確認された。その理由としては、方法書が十分に周知されておらず、住民の関心を十分に喚起できていないためではないかと研究会では考察している。
 今回の発表を通じて、方法書の作成段階から地域に根ざした適切な情報を入手するには、住民との双方向のコミュニケーションが重要かつ不可欠であることを再認識した。
(レポーター:日本エヌ・ユー・エス(株) 中村純也)

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