活動報告

セミナー・レポートサマリー 111

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■ 第2回公開セミナー・レポート 平成18年2月14日
環境に配慮した農業のあり方
−宮城県田尻町での取り組み−

講師:
農林水産省大臣官房環境政策課 課長補佐 落合 弘
宮城県田尻町農政商工課・商工観光室課長兼室長 西澤誠弘


○農林水産省における環境保全の取り組み

 農林水産省では、「食料・農業・農村基本法」のもと、農林水産業の持続的な発展のための「農林水産環境政策の基本方針」を策定し、自然循環機能を利用して環境負荷を低減させる先進的取り組みを支援している。「新食料・農業・農村基本計画」が平成17年に閣議決定され、「わが国農業全体を環境保全重視のものに転換」するとしたため、環境配慮型農業従事者(エコファーマー)も増えている。
 「改正土地改良法」や「自然再生推進法」においては、地域ごとに条件が異なることから、自然再生は地域主体で行うことが望ましく、国はこれを支援するとしている。

○宮城県田尻町での取り組み

 田尻町では、平成15年度から「田園自然環境保全・再生支援事業」を展開し、環境保全・再生型稲作栽培技術の確立に取り組んできた。また、「ラムサール条約第9回締結国会議」で、「蕪栗(かぶくり)沼・周辺水田」が水田としての湿地に登録・認定されたことから「田園自然環境保全・再生支援事業」を開始した。「冬期湛水水田(ふゆみずたんぼ)」の試行により、渡り鳥のねぐらや餌場の分散・拡大化、水質改善等環境面での効果、雑草の抑草効果や鳥の糞による施肥効果、不耕起栽培等農業面での効果が実証された。今後は、「冬期湛水+農薬・化学肥料不使用栽培」に対する支援金制度、環境保全共同活動への取り組み支援等を取り入れ、国の環境負荷低減取り組み支援施策である「農地・水・環境保全向上策」等と連動する形でステップアップを図る。そして、渡り鳥を保護しつつ、地域の自然、歴史文化資源を活かしたエコツアー実施を推進し、地域農業者、研究機関、NPO等と連携して湿地の「賢明な利用(ワイズユース)」に向け努力していくとのことであった。
 今後このような取り組みが全国で展開されるなら、新しい形の農業振興が期待され、里山の保全といった自然環境保全にも有効と感じた。
(レポーター:(株)オオバ 吉田俊幸)


■ 第2回公開セミナー・レポート 平成18年2月14日
公共事業におけるコミュニケーションとPI(パブリック・インボルブメント)

講師:
(財)計量計画研究所 都市政策研究室長 矢嶋宏光

 公共事業を行う場合の問題点に着眼し、約10年間の業務および研究調査により体系化されたPIの概念(参加型政策立案プロセス:市民の価値観を見極め、調整しながら、政策目的のために、柔軟に政策立案を進めるプロセス)およびコミュニケーション理論について、具体的な手法を交えながら分かりやすく説明された。われわれにとって共感でき、かつ、大変参考となる内容であった。
 ここ最近、道路、ダム、河川などのさまざまな公共事業においては、固有名詞をあげることができるほどの問題や紛争が起きている。これは、BSEや薬害エイズの問題などと同様に、行政の意思決定に対して不満を持つ市民が増えていることにある。また、CSR(企業の社会的責任)の問題も公共事業の問題と同様な構図にある。従来の利益追求型をベースとした一方的な企業体質が、いまや社会や市民に受け入れられず、結果企業全体が傾いてしまう。
 そこで、市民に与える影響のレベルに応じて、計画のプロセスを従来の古いタイプ(技術者ベスト案選定→事業者決定→市民情報提供→事業者防衛の流れ)から参加型プロセスという新しいタイプへ適宜変えることで、事業の中断・中止を避けるとともに、スムーズ、かつ着実に前へ進めることが必要となる。
計画のプロセス
 行政や企業の倫理観と市民の価値観とにズレが生じはじめる中で、両者Win・Winの創造を目指した合意形成に向けて、より深く考えるとともに、高い調整能力が必要であると強く感じた。また、事業の実施による環境影響評価を関係住民などへ単に説明するだけではなく、ご紹介いただいた具体的な手法を用いて、進め方、決め方、体制面での不安を与えず、理解を得て、信頼関係を築くことの重要性を再認識した。
(レポーター:(株)大林組 今田慎一)


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