活動報告

セミナー・レポートサマリー 108


■ IAIA SEA会議参加報告 平成17年9月26日〜30日
「IAIA SEA会議参加報告」

 わが国ではここ数年、戦略的環境アセスメント(SEA)への関心が高まっていますが、諸外国、とくに欧州諸国においても、EU指令に基づく各国のSEA制度整備が必要となっていることもあり、SEAへの関心は非常に高いものとなっています。
 IAIA(International Association of Impact Assessment:国際影響評価学会)の例年の総会には、JEASからもこれまで何度かミッションを送っていますが、IAIAは、今年はとくにSEAに焦点をあてた会議とし、SEA Prague:International experience and perspectives in SEAを総会とは別に開催しました。
 今回、この会議に参加する機会を得ましたので、その様子をお伝えしたいと思います。
 同会議は、9月26〜30日の5日間、プラハ郊外のチェコ農業大学において開催され、事前の参加者リストによれば380余名が参加し、日本からは東京工業大学の原科先生、環境省の冨安課長補佐など7名が参加しました。
 26日は国際協力におけるSEAについての会議、30日は各セッションのとりまとめと最終会議が行われ、27〜29日には、以下に示す5つの大テーマに沿った38のセッション(75コマ)が設けられ、発表や討議が行われました。セッションの運営方法は、セッションごとに定められた議長にまかされていましたが、多くのセッションでは若干の話題提供の後に会場内での活発な意見交換が行われ、議論の内容を深めてゆくようなスタイルがとられていました。発表の後に数分間の質疑応答が行われるといった、わが国で一般的な発表形式に慣れた身にとっては、非常に新鮮な体験でした。紙面の都合上、参加したすべてのセッションの報告を行うわけにはいきませんが、SEAをわが国に導入するにあたって、重要と考えられる3つのトピックについて簡単に報告します。

(1)SEAのデータとスケール

 実務に従事するコンサルタントとしては非常に興味のあるテーマですが、セッションでは「ケースバイケース」という以上の結論には至りませんでした。しかし、議論のなかでは「データを集めることに時間や費用を費やしても、結局、意思決定に反映されることがないのでは何も意味がない。『与えられた時間の中で最大限』というのがSEAに必要なデータだ」という強い意見がありました。

(2)SEAプロセスと社会経済評価の統合

 「SEAのプロセスは社会経済評価と統合されるべきなのか、あるいは社会経済評価とは独立して存在するべきなのか」という議論は、SEAの定義にかかわる論点であり、従前からさかんに論じられていましたが、多くの実践例を持つ欧米諸国においても、この点についてのSEAの定義づけは明確でなく、各国の持つ社会的背景によってさまざまな形態があり得るようです。

(3)SEAとEIA

 セッションの中で非常に印象に残る意見として、「SEAは計画段階におけるEIAではない」という意見がありました。これは、SEAの役割を「より早期の環境影響検討により、EIAでは対応できない環境影響の回避等が可能になる」という一面だけではなく、環境をまさに「戦略的」に扱うツールとして位置づけているものと考えられました。

 Stream A: SEA制度と政策
 Stream B: 主なセクターにおけるSEAの実践
 Stream C: SEAと他のアセスメントやプランニングツールとの連携
 Stream D: SEA実践にあたっての横断的課題
 Stream E: SEAの水準向上と能力開発
(レポーター:日本工営(株)黒崎 靖介)


■ 第1回野外セミナー・レポート 平成17年9月2日・3日
「奥日光自然観察研修会」

 9月2・3日に開催された奥日光自然観察研修会に参加した。標高が高く、自然が多く残されている奥日光は、これ以上ない学習の場である。
 最初に自然観察が行われた小田代ヶ原では、環境省自然環境局の小沢次長から野生動物による湿原植生食害対策事例としてニホンジカ侵入防止柵整備事業の解説をいただいた。シカ増加による被害は農林業で甚大であったことや、実際に小田代ヶ原一帯を囲うように設置された電気柵とその柵の内側と外側の植生の生育状態の違いを見学し、整備事業の効果を目の当たりにするとともに、自然保全の観点からも改めて考えさせられた。とくに、優れた景観を維持するための特別保護地区内で人為的な影響が強すぎるのではとの声もありそうだが、「景観の維持」が「生態系の維持」に基づくと考えると、シカ問題解決のための応急的対策として非常に有効であり、今後も農林業と野生生物との共存、自然保全について考えていかねばならないと感じた。
 つづいて視察した日光湯元ビジターセンターでは、自然公園財団日光支部の森所長から国立公園の管理方法や、センターが抱える財政的問題、外来種であるオオハンゴンソウ除去事業についての話をうかがった。素晴らしい環境をもつ国立公園というハード面、欲しい情報が得られるビジターセンターというソフト面を持ちながら、これら両者を有効に使いきるには、まださまざまな問題があるという印象を受けた。自然環境や環境教育への関心が高まっている潮流を考えると、国立公園やビジターセンターへの注目度は今後さらに大きくなると考えられる。自然環境に携わるものとして、その有効な利用方法について常に問題意識と提案への欲求を持っていたい。
 今回の研修では、国立公園の現状や国内の自然環境が抱える問題の一部を垣間見ることができて、非常に有用であった。また、同業種の方々と接する場に参加できたことも大きい。今後もこのような研修や交流の場を見つけて積極的に参加していきたい。
(レポーター:八千代エンジニヤリング(株)小出 舞)





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