活動報告


支部報告 92


■北海道支部 懇親会 平成13年9月3日

 懇親会は、来賓、協会会員総勢61名参加のもと北海道支部事務局石川一氏の司会で進められた。進藤義郎北海道支部長が、道支部への期待に添うべく支部会員の技術の向上、協会の活性化に寄与して参りたいと開会の挨拶を述べた。来賓のご挨拶で、小林正明環境省総合政策局環境影響評価課長は、平成9年6月に制定された環境影響評価法は進化の過程にあり、今後とも充実させていくことが大切であること、そのためには、法の風上に当たる戦略アセスメントも、風下に当たる事後調査による科学的知見の集積も発展させていくことが重要であると話された。
 乾杯の音頭は、北海道環境生活部の青木次郎環境室長がとられ、「環の国づくり」を進めていくためには、民主導の社会体制が大事であり、日本環境アセスメント協会の役割もより重要になってくるであろうとのご挨拶をいただいた。
 宴もたけなわのころ、司会者から平岸天神の皆さん20名が紹介され、北海道名物の踊り「よさこいソーラン」の実演が披露された。会場は、鳴り響く音と掛け声、激しい踊りの迫力、そして大喝采に満たされた。
 アトラクションの後、協会の総務部会長である二宮章理事の閉会の挨拶となった。23年間の協会活動のなかでの一番の出来事である協会の法人化について、当時の裏話とともに、今後も環境アセスメントに関するさまざまな課題に的確に対応し、現在の社会的閉塞感を打ち破っていきたいとの抱負が語られ、一本締めで会を締められた。
 協会会員、道支部会員および関係官庁との活発な意見交換が行われ、有意義な懇親会であった。


■北海道支部 設立記念セミナー「試される大地−環境との共生」 平成13年9月3日
「より良い環境アセスメントを目指して」

講師:環境省環境影響評価課評価技術調整官 上杉哲郎
「田園生態系保全−私の北海道」

講師:酪農学園大学教授 坂本与市
 (社)日本環境アセスメント協会北海道支部設立を記念して、特別セミナー「試される大地−環境との共生」が、平成13年9月3日開催された。会場となった札幌グランドホテルには、環境省、北海道をはじめとする官庁の来賓および協会会員総勢188名が参加し、大盛会となった。
 日本環境アセスメント協会栗本洋二副会長から主催者挨拶があり、続いて、北海道環境生活部の青木次郎環境室長から来賓挨拶があった。
 講演に入り、はじめに「より良い環境アセスメントを目指して」と題して環境省環境影響評価課評価技術調整官上杉哲郎講師に国の立場から講演していただいた。
 環境影響評価法に対応したより良い環境アセスメントを行うための手法とそのための課題、これからの新しい環境アセスメントのあり方としての戦略的環境アセスメント(SEA)の概要とその留意点についての講演であった。
 現アセス法に基づくアセスメントにおいては、個別案件ごとの創意工夫が必要であり、そのためのスコーピングの重要性を改めて認識させられた。また、より良いアセスメントを目指すには、現在の事業アセスには限界があり、SEAの確実な定着が望まれる。
 次に「田園生態系保全−私の北海道」と題して酪農学園大学教授坂本与市講師の講演が行われた。
 植物と昆虫の関係、とくに北海道の田園の生態系と、開発によるその生態系への影響について話された。講演のはじめに「今日の講演の目的の1つは、誰にも居眠りをさせないこと」と言われたとおり、昆虫の夫婦関係などちょっとエッチな話題も交えての講演で、会場は盛り上がった。今後は北海道において、さまざまな環境アセスメントを必要とする環境問題が想定されることから、意義深いテーマであった。

(レポーター:(株)開発工営社 近藤久和)

■北海道支部 野外セミナー 平成13年9月4日
「野幌開拓の村探訪」

 平成13年9月4日、(社)日本環境アセスメント協会北海道支部設立を記念して企画された見学研修会「野幌開拓の村探訪」に参加した。当日はからりと晴れた絶好の探訪日和となった。前日、特別セミナーが開催された札幌グランドホテルに午前9時集合、総勢24名がバスで「野幌開拓の村」に向かった。
 入村後、入口広場の案内板の前で、学芸員の方から簡単な説明を聞くことができたが、詳しくは「半てんを着たボランティアの方に聞いてください」とのこと。さて、それからは村内の自由探訪である。その前に記念撮影。
 「開拓の村」は、明治・大正期に建てられた北海道の建物を、54haの敷地に復元・再現した野外博物館である。村内は、市街地群・漁村群・山村群・農村群から構成されており、中央には馬車鉄道が走っている。
 まずは徒歩で村内を散策。市街地群の建物は小さくて、部屋の造りなどは随分と狭く感じた。鍛冶屋、理髪店、菓子店などが建ち並び、その展示品には懐かしい品物もあり、菓子などはその味まで頭に浮かんだ。次に北海道といえばニシン。漁村群に向かうと瓦屋根の大きな漁家住宅が目に入る。横には倉庫群がずらりと並んでいる。中に入ると、中央が天井まで吹き抜けの大きな部屋がある。周囲には寝泊まり用に畳が並べて敷いてあり、二階構造になっていた。50〜60人が寝泊まりできる広さで、ニシン漁の最盛期には漁夫たちで大混雑した様子がしのばれた。農村群、山村群を巡り、帰りは馬車鉄道で入口広場へ。
 今回の「開拓村探訪」では、開拓時代の様子を知ることができ、そんな時代を経て現在があることを改めて感じさせられた。これからの時代も、現在を経て形成されることを考えると、環境への配慮がいかに大切であるかが痛感される。

(レポーター:(株)ドーコン 保田藤良)

■関西支部 第1回研究集会レポート 平成13年5月18日
貝塚市立「自然遊学館・自然生態園」と
(財)関西空港調査会「関空交流館」の見学


 関西支部の今年度第1回研究集会が、平成13年5月18日に行われた。今回は、貝塚市二色浜の「市民の森」に設けられた「自然遊学館・自然生態園」と「関空交流館」を見学する会である。
 南海電鉄二色浜駅に集合し、二色の浜公園の中を通って、ハマナスやコアジサシを観察しながら「自然遊学館」へ徒歩で向かった。ここは平成5年10月、市民の森の中核施設として開設され、海・山・川のさまざまな生物標本や世界の珍しい昆虫(約400点)などを展示している。館員の白木江都子氏から、展示されている生物等について説明を受けた後、本館横の「自然生態園」に移動し、「トンボの池」「どんぐりの森」「バッタの原っぱ」「海辺の植物ブロック」の4つの生態系ブロックを見学する。メイン施設であるトンボ池は、「水道水を使わない」「機械を使わない」「池の底にシートを使わない」「貝塚産以外の材料は使わない」ことにこだわって造られたという説明を受ける。とくに、雨水を蓄えるため地中にビールケースが整然と並んでいる光景は圧巻であった。午後には、スライドをおりまぜて「トンボの池」ができるまでのあらましを話していただいた。多くの人びととのふれあいを重ねながら、楽しく造り上げることができた、と自信をもって話されていたのが印象的だった。
 昼食後、遊学館に隣接して今年4月にオープンした「関空交流館」に移動して、関西空港調査会企画部長の久保忠義氏から、関西国際空港とそれにまつわる環境問題についての話をうかがった。「関空交流館」の役割と今後の方向性は、関西空港と人・情報・環境をつないでいくこと、地域との密着をめざすことが大きな課題だと説明されたことが印象に残る。
 われわれは、人間と環境との関係を考えすぎるあまり、人間と人間との関係を忘れがちになってきたように思う。両先生のお話からは、人間と環境との関係を勉強しただけでなく、さらに人間と人間の関係の大切さを再認識させられた。私自身にとっては、初めて参加した研究集会であったが、予想以上に非常に有意義な経験をすることができた。

(レポーター:(株)日本総合科学 江木寿男)

■関西支部 第1回研究集会レポート 平成13年5月18日
貝塚市立「自然遊学館・自然生態園」と
(財)関西空港調査会「関空交流館」の見学


 関西支部の今年度第1回研究集会が、平成13年5月18日に行われた。今回は、貝塚市二色浜の「市民の森」に設けられた「自然遊学館・自然生態園」と「関空交流館」を見学する会である。
 南海電鉄二色浜駅に集合し、二色の浜公園の中を通って、ハマナスやコアジサシを観察しながら「自然遊学館」へ徒歩で向かった。ここは平成5年10月、市民の森の中核施設として開設され、海・山・川のさまざまな生物標本や世界の珍しい昆虫(約400点)などを展示している。館員の白木江都子氏から、展示されている生物等について説明を受けた後、本館横の「自然生態園」に移動し、「トンボの池」「どんぐりの森」「バッタの原っぱ」「海辺の植物ブロック」の4つの生態系ブロックを見学する。メイン施設であるトンボ池は、「水道水を使わない」「機械を使わない」「池の底にシートを使わない」「貝塚産以外の材料は使わない」ことにこだわって造られたという説明を受ける。とくに、雨水を蓄えるため地中にビールケースが整然と並んでいる光景は圧巻であった。午後には、スライドをおりまぜて「トンボの池」ができるまでのあらましを話していただいた。多くの人びととのふれあいを重ねながら、楽しく造り上げることができた、と自信をもって話されていたのが印象的だった。
 昼食後、遊学館に隣接して今年4月にオープンした「関空交流館」に移動して、関西空港調査会企画部長の久保忠義氏から、関西国際空港とそれにまつわる環境問題についての話をうかがった。「関空交流館」の役割と今後の方向性は、関西空港と人・情報・環境をつないでいくこと、地域との密着をめざすことが大きな課題だと説明されたことが印象に残る。
 われわれは、人間と環境との関係を考えすぎるあまり、人間と人間との関係を忘れがちになってきたように思う。両先生のお話からは、人間と環境との関係を勉強しただけでなく、さらに人間と人間の関係の大切さを再認識させられた。私自身にとっては、初めて参加した研究集会であったが、予想以上に非常に有意義な経験をすることができた。

(レポーター:(株)日本総合科学 江木寿男)

■中部支部 第1回技術セミナー・レポート 平成13年7月18日
「土壌汚染の現状と法規制の動向」

講師:環境省環境管理局水環境部土壌環境課 課長補佐 荒木真一
 最近顕在化している土壌汚染の実態とその背景、これまでの法制度の問題点と今後の行政サイドの取り組みについてご講演いただいた。
 土壌汚染の事例は、判明件数でみると平成11年度で117件となっており、ここ数年で大きく増えている。この背景としては、1) 工場跡地の再開発で売却により判明、2) 環境ISOによる企業の環境管理と自主的な調査の実施、3) 自治体の条例や要綱の策定による取り組み、4) 地下水汚染から土壌汚染の発見、などがあげられる。また、ダイオキシン類の土壌汚染では、廃棄物の焼却処理に関連して大阪府の能勢町、埼玉県所沢市などが注目されたのが記憶に新しい。
 現行の環境基準は、土壌から地下水への溶出という観点からの基準値である。一方、ダイオキシン類は、地下水ではなく人体が直接摂取する場合の評価となっている。土壌汚染の暴露経路は、汚染土壌の皮膚等を経由しての摂取、公共用水域への流出から魚介類を経由しての摂取、農作物への蓄積によるものなどが考えられる。さらに生態系への影響も懸念される。
 しかし、これらの経路の解明やリスク評価に対する知見は十分でなく、今後の検討課題となっている。また、土壌汚染対策に対する関心が高まり、各方面から対策に関する要望が増えて、何らかの制度化が求められている。ここでの課題は、誰がどこまで対策をするのかなどの明確なルールの構築や責任体制を明確化することである。具体的にあげると、1) 土壌汚染を把握する場合どのように調査を実施するか、2) そして発見された場合には管理方法としてどのように対策・措置するのか、3) 誰の責任で実施するのかである。
 その他、情報の管理方法や監視体制の構築も必要であり、多くの難問を抱えているのが現状である。まずは、事例などの情報の蓄積と、解決に向けて広い論議が必要であることを痛感した。

(レポーター:玉野総合コンサルタント(株)後藤 迪)

■中部支部 第1回技術セミナー・レポート 平成13年7月18日
「土壌・地下水汚染の現状と対策」

講師:和歌山大学システム工学部環境システム学科 教授 平田健正
 本講演は、地下水汚染対策の技術的なアプローチを中心にしたものである。地下水汚染の事例として、静岡県の牧ノ原台地と岐阜県各務原市の、いずれも硝酸性窒素の地下水汚染と対策事例を中心にご紹介いただいた。
 硝酸性窒素の汚染原因は、農地への施肥によるものである。事例によれば、1,000kgの窒素を散布すると、約半分の500kgは地下に浸透することが判明した。そして、このケースでは地下水における濃度は50ppmになっている。地下水汚染の被害は、硝酸性窒素の増加による直接の健康被害よりも、pHの低下によって粘土鉱物に含まれるアルミニウムの溶出による影響が大きく、被害は二次的である。牧ノ原台地のため池では、アルミニウム濃度で10ppmを超え、植物プランクトンが生育できない濃度までになっており、生態系への被害は深刻である。各務原の事例では、1980年代に汚染が発見され、硝酸性窒素が10ppmを超えたため、飲料水として制限が行われた。
 実際の対策方法は、脱窒菌による脱窒作用を応用するもので、サイトを嫌気的にする必要があり、ここでは還元剤として鉄粉を使用した。設備は、透過性地下水浄化壁を用い、さらに鉄と砂れきを混ぜる方法を用いた。また、微生物活性を高める必要から有機物(生分解プラスチック)を投与した。
 汚染の修復技術は、媒体をいかに管理できるかによるが、現在の環境基準だけで汚染をコントロールできるかは疑問であると考える。また、汚染の回復には多くの時間と多額の費用が必要とされており、汚染対策の難しさを改めて実感した。
 さらに、地下水汚染は、飲料用水や農業用水のみならず生態系に与える影響も大きく、一度被害が発生すると事態は深刻となる。対症療法的であるが、今後は土壌汚染も含めての汚染の早期発見と未然防止がわれわれに求められる課題であると思う。

(レポーター:玉野総合コンサルタント(株)後藤 迪)




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