活動報告

支部報告 113

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■北海道支部 野外セミナー・レポート 平成18年10月11日
道立旭川21世紀の森と旭山動物園自然見学会

 本年度の野外セミナーには17名が参加し、美しい自然と共存する旭川市を訪れた。
 最初の訪問先「道立旭川21世紀の森」は、森林に親しみながらその働きや役割について理解を深める施設である。当日は悪天候のため、予定していた自然観察歩道の散策が中止となり、森林学習展示館の見学となった。展示館では、三浦正男管理人から施設の概要、森林と林業の関わり、動植物の実物や模型、標本や写真などの解説をいただきながら1時間程度の見学を行った。内部には木材が豊富に使用され、木工品や模擬林の展示や落葉のしおり作成など多くの催しがあった。屋内の見学であったが、自然を十分に満喫することができ、森林の大切さを再認識するとともに、青少年の環境学習の場として是非活用したい施設であると感じた。今度は晴れた日にぜひ訪れてみたい。
 次いで訪れた「旭山動物園」は、行動展示として今最も注目されている動物園である。入園前、動物園の那須秀昭氏から、「自然のなかで常に樹上生活しているオランウータンには高さ17mの空中散歩場を設けてやるなどしている。行動展示とは動物本来の動きや能力を引き出して展示することであり、10年前にはその姿を絵(本)などにして保存していたものを今実現させているだけ」との説明をいただいた。シロクマ館、アザラシ館など、その行動展示を園内各所で見学することができた。飼育員による展示動物のガイドも積極的に行われており、レジャーだけでなく動物園本来の目的である教育にも力を入れているのを感じ、その人気に納得できた。動物本来の動きを知ることは、環境保全の観点から重要である。旭山動物園の取り組みは今後の環境アセスメント分野に携わっていくうえでの参考になるものと考える。
(レポーター:野外科学(株) 高岡伸一)


■関西支部 第1回セミナー・レポート 平成18年8月3日
(1)近畿圏における都市再生
(2)大阪湾再生等近畿圏における都市再生事例紹介


講師:
国土交通省近畿地方整備局企画部広域計画課 課長補佐 勝井厚伺

 「近畿圏における都市再生」では、都市再生特別措置法に基づき実施されている(1) 「都市再生プロジェクト(新しい都市創造、緊急課題対応プロジェクトとして20プロジェクトを指定)」、(2) 「民間都市開発投資促進(民間都市開発を通じての都市再生緊急整備地域の指定)」、(3) 「全国都市再生のための緊急措置(地方自治体、NPO法人などによる地域活性化のプロジェクトの指定)」の3点について説明がなされた。特に、全国都市再生のための緊急措置として創設された“市町村の創意工夫が活かせる新たなまちづくり交付金”は年間2〜3割程度増額されているので、道路、駅、公園の整備以外でも、地域活性につながる取り組みであれば広く応募していただきたいとのことであった。
 「大阪湾再生等近畿圏における都市再生事例紹介」では、市民が誇りうる「大阪湾」を創出することを目標に、“陸域負荷削減施策の推進”、“海域での環境改善施策の推進”、“大阪湾再生のためのモニタリング”などの取り組みが紹介された。そのなかでも、産学官共同で同日同時間帯に実施される大阪湾水質一斉調査(H17:448地点、H18:478地点)は、湾内の汚濁状況等を把握するうえで貴重なデータが得られており、都市再生プロジェクトの取り組みとしての大きな成果であるとのことであった。また、人工干潟の設置、人工護岸周辺における昆布の森づくり、アマモの移植など市民・NPOとの協働の取り組みがテレビ・新聞等をとおして多くの人々に周知された。今後も多くの人々に周知するための活動を行い、市民・学識経験者・企業との更なる連携と協働の体制づくりを着実に進めたいとのことであった。
 今回の講演を聞いて、都市再生は一部の関係者が行うのではなく、市民を含めた多くの人々の手で行っていくことによって今後の国・まちづくりを市民レベルで考えていく土壌が育まれていくと感じた。
(レポーター:東レエンジニアリング(株) 保利信哉)


■関西支部 野外セミナー・レポート 平成18年10月20・21日
自然環境の保全と再生 in びわこ

 関西支部野外セミナーには総勢23名が参加し、2日間にわたって実施された。参加者は、JR線石山駅(滋賀県大津市粟津)に集合し、戦国時代『唐橋を制するものは天下を制する』といわれた唐橋でびわこを渡った。する。

<一日目(くもり)>

 龍谷大学瀬田学舎では、理工学部教授の竺文彦先生にビオトープについて講義をしていただいた。
 1970年代、欧米では野生生物の生存権あるいは自然の権利について議論され、開発等においては近自然工法を活用したビオトープづくりによる自然との共生を目指すものとなった。また、スイスの住民投票による工法決定など、地域住民と一体となった取り組みが紹介された。
 午後は、NEXCO西日本・大津工事事務所の藁科副所長より第二名神高速道路建設における環境への取り組みについて説明があった。
 隼人川では、現存植生そのものの移設、花崗岩による澪筋や瀬・淵の再生、伐採木のチップ化による法面緑化により工事前の河状にできる限り近づける工夫などが見られた。今後は、流水の営力や出水等の攪乱によってより自然に馴染むよう期待しているものと感じられた。
 栗東橋主塔の信楽の岩肌色と旧千円札の翼をひろげた鶴の外形は、大戸川風景に溶け込んでいた。また、上部工ウエブの焼いた唐辛子色は、くもり空にも調和していた。
 トンネルでは、延長の短縮化によるガス対策、掘削により生じた岩・礫の路盤材や盛土材としての利用、初期降雨で道路上に発生する汚濁物質を除去する排水処理施設、穴太衆積みによる壁高欄などを見学した。
 まさに地域の自然・景観・文化と共生する道づくりと感心した。

<二日目(快晴)>

 秋の夜長を湖北で語り合い、かつて浅井長政が城主であった小谷城を出発した。
 姉川、草野川を渡り、湖北野鳥センターへ。湖北野鳥センターではヒシクイ、バン、アオサギ、コサギ、カモなどを観察した。村上先生(滋賀県自然環境保全・学習ネットワーク会長)から、びわこの内湖であった早崎干拓地の再生事業について説明していただいた。植物・魚類・昆虫・鳥類などの野生生物は、おおむね3〜4年で安定し、実験現場ではヨシ、ガマ、タコノアシ、ウキヤガラを観察した。丁野木川河口部では、内湖とびわことの接続の検討、外来魚対策、干拓地周辺のびわこ逆水の農水利用実態などが紹介された。なかでも、日本最大(約90ha)のビオトープ再生計画の壮大さには非常に驚かされた。
 午後は、山内一豊・千代など歴史を生かしたまちづくりを目指す長浜市街で、広場の噴水や壁泉、北川の多自然型川づくりなどを探索した。

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 戦国時代から現代において、また世界的にも自然環境保全が求められるなかで、川づくり、道づくり、まちづくりにおける自然環境の保全と再生・共生、あるいは次世代に継承するための維持管理の重要性の提唱など、壮大かつ繊細で非常に実りあるセミナーであった。
 興味深く解説してくださった竺先生や村上先生、藁科副所長、スタッフの方々、そして高田野外セミナー運営委員長、中島運営委員に改めて深謝したい。
(レポーター:(株)新洲 小野内泰二)

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