活動報告

支部報告 110

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■関西支部 野外セミナー・レポート 平成17年11月18日
資源循環型の経済社会へ向けて
「北九州エコタウンを訪れて」


 われわれの暮らしが便利で豊かになる一方で、多量のゴミが排出されるという問題を抱えている。この問題を解決するには、現在の「大量生産・大量消費・大量廃棄」型社会を見直し、「3R(リデュース・リユース・リサイクル)」を目指す資源循環型の経済社会への変換が求められている。
 このような社会背景を考慮し、平成17年11月18日、ゼロ・エミッション構想を目指したエコタウン事業を展開する北九州エコタウンにおいて、関西支部の野外研修が開催された。研修の主旨は、エコタウン事業のなかで廃棄物をリサイクルする技術や仕組みを学ぶとともに、リサイクル事業の抱える課題等を把握することであった。各施設の見学により、廃棄物リサイクルのための技術や仕組みを詳しく知ることができたが、コストの問題など経済的な視点に立った意見交換ができればさらに良かったと思われる。
 リサイクル事業としては二つの工程を見学した。一つはバイオマスのポリ乳酸化システムである。再生資源となる木材廃棄物や食品廃棄物などのバイオマスからケミカルリサイクルが可能なリグノフェノールやポリ乳酸などの物質を製造する。もう一つは、建設廃棄物から木材廃棄物やプラスチック廃棄物を分別し、新たな再生建材をつくる工程である。廃棄物の分別と再生建材の製造はそれぞれ別の企業が行っているが、共同企業体として一体化されている。上記2工程で目をひいたのは、廃棄物から生産された新たな原材料や製品が、リサイクルの工程でもまったく同じ原材料や製品として再生産され、新たな廃棄物はほとんど発生しないことである。また、リサイクル事業はコストがかかるというイメージが強いにも関わらず、エコタウン内では潰れた会社がないという点も興味深かった。
 企業は利益を出すことが前提である。今後、北九州エコタウンのような共同企業体によるリサイクル事業運営が、資源循環型の経済社会にも大きく貢献していくものと感じた。
(レポーター:アジア航測(株) 山賀由貴)


■関西支部 第2回セミナー・レポート 平成17年12月2日
近畿地方環境事務所の業務と展望

講師:近畿地方環境事務所長 出江俊夫

 環境行政においては、廃棄物・リサイクル対策、地球温暖化対策、自然環境保全等、国として地域に軸足を置いた施策の展開が求められている。
 このような状況に鑑み、地域における環境省の「顔」として地域の問題と向き合い、地域の視点に立って考え、地方行政、専門家、住民等との協働による取り組みを進め、地域の実情に応じた機動的できめ細かな施策を実施するため、現行の自然保護事務所と地方環境対策調査官事務所を統合し、法令権限や予算執行権限を委任できる地方支分部局として、平成17年10月1日、全国7か所に地方環境事務所が設置された。近畿地区は、近畿地方環境事務所(大阪市)が担当する。
 近畿地方環境事務所では、機動的できめ細かな現場部隊、地域環境の活性化支援拠点、地域の環境データバンク等の地方環境事務所としての機能を発揮するため、平成18年度に1,899百万円の予算申請を行い、(1) 地域における関係主体とのネットワークの構築、(2) 地域における環境広報、(3) 地域環境情報の収集・整理および発信、C個別分野での地域環境問題への取り組みを事業計画として掲げている。
 現在、関西では、都市再生プロジェクトの一貫として、大阪湾ならびに琵琶湖・淀川流域圏を健全な姿に再生し、次世代に継承することを目的とする再生プロジェクトが推進されており、官民協働による調査の実施や産官学連携による施策が展開されている。
 講演で情報提供のあった「近畿環境館(近畿環境パートナーシップオフィス)」は、これらのプロジェクトやその他の環境保全活動等にかかわる協働・連携を強力に推進するための人、情報の交流拠点として機能することが大きく期待される。流域に暮らす市民であり技術者のひとりとして、これらの拠点を活用させていただき、微力ながら“次世代継承の使命を果たせれば”と決意を新たにした次第である。
(レポーター:(株)環境総合テクノス 藤井義之)


■関西支部 第2回セミナー・レポート 平成17年12月2日
コウノトリの野生復帰 −試験放鳥開始−

講師:兵庫県立コウノトリの郷公園田園生態研究部 主任研究員 大迫義人

 平成17年9月24日、兵庫県豊岡市にある兵庫県立コウノトリの郷公園(以下、郷公園とする)で飼育されていたコウノトリが、試験放鳥された。
 放鳥されたのは、2〜7才のオス2羽、メス3羽で、川から生きた魚を捕る採餌訓練および飛翔訓練を受け、コウノトリ社会での社会性を身につけた個体である。メスが1羽多いのは、平成14年8月に郷公園に飛来し、その後3年以上その周辺に滞在している1羽の野生個体(オス)とのペアリングを期待してのことである。
 地元では、コウノトリと共生するためのさまざまな取り組みが進められている。豊岡盆地を流れる円山川には、各所に人工ワンドが設けられ、休耕田は水を張ってビオトープ化されている。また、冬季湛水水田も設けられるなど、コウノトリの採餌場所を確保する工夫がされている。放鳥個体が餌場として利用するかどうかをみて、これらの環境を評価するというのが興味深い。
 放鳥個体の背中には発信器が装着されており、仮に国外へ飛去しても追跡が可能である。しかし、放鳥から2か月以上経った現在でも、5羽すべてが郷公園とその近隣にとどまっており、直接観察によって行動の詳細なデータが取られている。
 これから先も園内にとどまるようであれば、逆に放鳥個体を園外へ積極的に出て行かせるような工夫も必要となる、とのことであった。放鳥個体にとっては、これから試練が始まりそうである。それと同時に、再び地域にコウノトリを受け入れようとする人間側にもそれなりの覚悟が必要となるであろう。
 コウノトリの野生復帰は、地域全体を巻き込んだ大規模な野外実験であり、その場に行けば(運が良ければ)誰でも放鳥個体を観察できる。今後5年間にわたり試験放鳥を行っていくとのことで、今後の展開がますます楽しみである。
(レポーター:環境科学(株) 木村しのぶ)

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