活動報告

支部報告 102

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■北海道支部 第2回技術セミナー「北海道の自然環境と共生」・レポート 平成15年12月5日
「希少植物保全モニタリング手法」

講師:
北海道環境科学研究センター自然環境部植物環境科 研究職員 西川洋子

 環境影響評価法制定後、新たに「生態系」の項目が位置づけられ、環境の指標性が高い植物も、従前の貴重種主体の評価から「種」「群落」など各段階の多様性を高める保全手法が求められている。
アセス関係者にとって、ほかの評価項目と違い、基準がなく、調査予測手法の規定されていない植物について、講師の実体験と豊富な研究資料を基に興味深いお話しをいただいたことは、またとない貴重な機会であった。
わが国の希少植物の現状は、2000年改訂『日本の絶滅のおそれのある野生生物−レッドデータブック・植物』(環境庁)に定量的に示され、絶滅のおそれのある植物は実に1,665種、22%の分類群が絶滅または絶滅危惧植物である。とくに深刻な危機状態にある絶滅危惧IA類(CR)は564種と約3分の1を占めているとのことであった。
北海道においては、絶滅のおそれのある植物が193種約6.7%の分類群(うちIA類(CR)が36種、約5分の1)でリストアップされており、全国との比較では低いものの、地域的に絶対数が少ないこと、盗掘による絶滅が危惧されることなどが指摘され、改めて共有の財産として、保全の大切さを認識させられた。
講演のなかで、希少植物を保全するための調査手法として提案されたのが、@個体群構造の長期モニタリングと数理モデルによる集団の将来予測、A繁殖に関する生態調査、B集団の遺伝情報の把握、の3系統からなる評価プロセスであり、参考例をあげながらのお話しをいただいた。現場の実践者としては、たとえば植物個体の遺伝子を調査する方法として、酵素多型分析やゲル電気泳動法などについては、専門分野がケミカルで少々難解な面もあったが、アセス関連のコンサルタントに現在求められているのは、定量的評価に寄与できる適正なデ−タ採取方法の再構築と、対応した意識変化にほかならないと強く感じた講演であった。
(レポーター:(株)北電総合設計 久連山一禎)

■北海道支部 第2回技術セミナー「北海道の自然環境と共生」・レポート 平成15年12月5日
「猛禽類調査の課題」

講師:
帯広畜産大学名誉教授 藤巻裕蔵

 猛禽類の調査方法として、GISを活用して調査重点地域や生息適地の抽出を行い、環境改変地域と生息適地の関係および環境改変周辺地域の生息適地を検証する手法が紹介された。
影響評価について、従来、猛禽類については定性的な扱いしか行っていなかったのに対し、藤巻先生は定量的な評価の必要性を説かれた。定性的評価では猛禽類の行動圏と環境改変部分の位置関係しか明らかにできなかったが、定量的評価では猛禽類の行動圏内の環境改変部分の重要度が明らかになることが示された。ただし、評価の基準を数値化することについては、今後の課題としていくとのことであった。
最後に、事業計画にともなう保全対策にも言及され、営巣環境ばかりでなく採餌環境も保全しなければならないことを論じられた。また、計画段階の情報収集が重要であり、これを基に、工事中および完成後の保全対策を立案していくことの必要性を訴えられた。そして事後のモニタリングとして、保全対策の検証を行うことの必要性を力説された。
今回の講演で最も印象に残ったのは、「定性的評価から定量的評価へ」ということであり、生物を評価する方法としても定量的尺度が必要であるということであった。そして、これらの調査方法や評価方法を通して猛禽類を保護していき、北海道の大地にオオタカやクマタカの飛翔する姿を次世代の子どもたちにも見せることがわれわれの使命ではないかと考えた。
(レポーター:三洋テクノマリン(株)小西繁樹)

■酪農学園大学主催/北海道支部協賛セミナー 平成15年12月20・21日
平成15年度「GIS講座〜環境アセスメントへの応用実習〜」に参加して

 昨年に引き続き、酪農学園大学エクステンションセンターでGIS講座が2日間開催された。この講座はGIS初心者と、すでに仕事で使われている方を対象としたものであり、支部会員12名が参加した。
1日目の初級講座では主にGISについての基礎知識と、既存のデータを用いたArcView8.3の簡単な操作法を、2日目の応用講座ではデータを作り出す過程を学んだ。講義の全体の流れはよく考えられており、初心者の自分にとっても理解しやすい構成であった。さらに、二日間で講師をされた方々は6名に及び、各講義は講師の個性が良く出ていて引き付けられた。
講義では「生物多様性の高低と自然保護区の位置」を題材にGISを利用したGAP分析の話など、実習では、ラスタ・ベクタ変換用のソフトを用いた「画像データから等高線を抽出する」データ作りから始まり、さらに統計情報のダウンロードデータを加工して地図上に表示する過程や、河川からの距離・傾斜といった自然情報から危険度マップを作成する過程など大変興味深い内容で、あっという間に時間が過ぎてしまった。最後にそれまでに習った手法を用いてカタクリの生育適地を抽出し、二日間の講座が終了した。
内容は盛りだくさん過ぎて時間不足の感は否めなかったが、少人数制で懇切丁寧に教えていただき、理解を深めることができた。さらに、あつらえられたデータばかりでなく自らデータを作り出し、具体的に演習を行ったためわかりやすく、楽しみながら操作法や概念を学ぶことができた。
この講座のために準備をしてくださった方や講師の方々に感謝するとともに、このような講座が継続的に開催され、より多くの人が参加できることが望まれる。
(レポーター:(株)野生生物総合研究所 高井文子)


■中部支部 野外セミナー・レポート 平成15年11月20日
「廃棄物処理ガス化溶融処理施設及び北勢国道事務所情報センターの見学」

 今回の野外セミナーでは、三重県四日市市の(財)三重県環境保全事業団廃棄物処理センターガス化溶融処理施設、三重県亀山市の国土交通省北勢国道事務所情報センターの2施設を見学した。

◆ガス化溶融処理施設

(財)三重県環境保全事業団が、平成11年11月に厚生大臣から廃棄物処理センターの指定を受けて、四日市市小山町に建設を進めてきたガス化溶融処理施設が、平成14年12月12日から本格稼働を開始している。ガス化溶融処理施設は、三重県廃棄物総合対策、広域化計画等に基づく廃棄物処理センター事業の一環として計画されたもので、三重県内の一般廃棄物焼却施設から排出される焼却残さの無害・安定化、減溶・資源化、廃プラスチック類等のサーマルリサイクルなどを行っている。
 回転式表面溶融炉が巨大な炉自体が回転していることと、約1,300度の高温処理によりダイオキシン類を無害化していることには驚かされた。さらにダイオキシン類については毎日の測定により監視しているらしい。
 四日市市といえば四日市ぜんそくが有名だが、現代社会の新しい公害といえる廃棄物問題やダイオキシン類への対策に寄与する施設のひとつでもあるのかと感じた。

◆北勢国道事務所情報センター

 国土交通省北勢国道事務所情報センターは、中京圏〜近畿圏を結ぶ、名阪国道のうち三重県内の情報収集と提供を行っている施設である。工事規制や気象状況による路面状態などは、管内に63基設置されたCCTVカメラにより情報センター内の大型モニターで監視し、情報板への掲示や関係機関への通報などが行われる。
 情報センターを見学して驚かされるのが、巨大なモニター画面である。11台のテレビで63基のカメラ映像をすべて見ることができる。カメラの撮影方向は情報センターで自由に動かせることから、全線の監視が可能ということである。現在、警察の交通情報との情報共有化を検討しているということだが、そうなれば、さらに国道利用者のニーズに応えられる施設になると感じた。
(レポーター:アジア航測(株) 松沢孝晋)

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