活動報告
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特集「研究部会シンポジウム 自然環境影響評価とコミュニケーション技法」

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 研究部会では、環境影響評価に関する技術の調査・研究、その成果の普及を目的として、「自然環境影響評価技法研究会」と「コミュニケーション技法研究会」を設置し、2年間にわたり研究活動を行ってきた。
 このたび、活動を終えるにあたり、研究テーマに造詣の深い学識経験者、国土交通省および埼玉県から講師をお招きし、研究会委員も参加してシンポジウムを開催したので、その概要を紹介する。なお、環境省のご協力により、シンポジウムの開催にあわせて「環境アセスメント技術展」を開催した。

■第一部/「自然環境影響評価の課題と展望−とくに動植物・生態系について−」
基調講演(1)「生態系のミチゲーション」

講師:
東京農工大学農学部教授 亀山 章
 エコロード、エコパーク、景観工学など非常に幅広い分野で活躍されている亀山先生を講師にお迎えし、生態系のミチゲーションとは何か、そしてその留意点、課題は何かについてわかりやすくご説明していただいた。
 ミチゲーションについての講演では、「回避」「低減(最小化)」「代償」といった制度上の主題に関する説明がなされることが多い。しかし、亀山先生はこれらのことには一切触れず、ミチゲーションについて「生き物や生態系のシステムと建設技術のシステムとを調整して、新たなシステムを構築するもの」と説明され、非常に新鮮な印象を受けた。
 ミチゲーションは、生態系の仕組みを解明する「生態学」と、土木工学や建築工学などの建設事業にかかわる「工学」の二つの学問から構成されている。「生態学」は生き物の生活のシステムを解明しようとする学問であり、「工学」は人の生活に役立つ技術をシステムとして構築する学問である。両者ともシステムを扱う学問ではあるが、「解明」と「構築」といったスタンスの違いがあり、この点が両者の結合を困難にしている。
 この結合を実現させるためには、両方の立場の者が「生き物の生活には非常に未知な部分が多い」ということを認識することが重要となる。
 事業を実施する側は、工学的な理論で事業を進めていく。工学とは、一般的には既知の理論で既知の材料を使用するものである。未知の事柄をシステムのなかに入れてしまうとうまく機能しないため、未知なものを排除してモノを組み立てるということが基本姿勢である。一方、生き物についてはわかっていない点が非常に多い。したがって工学には、本来生き物となじみがよいとは言いづらい面があるが、ミチゲーションの場合は、いかに未知の部分が多くても、生き物という存在を排除するわけにはいかないため、どのように付き合うかということが重要となる。すなわち、わからないものをそれとして認めながら、いかに上手く付き合うか、ということがミチゲーションの基本命題である。
 ミチゲーションを実施するにあたっては、何のために行うかという「目的」と、何を目指して行うかという「目標」の設定が重要である。生態系の仕組みには未知な部分が非常に多く、人間による影響に対する反応についても得られている知見が少ないため、目標として生き物の具体的な種名や個体数などを示すことは困難である。そのため、目標はある程度の幅をもって示されることになる。それに対し、工学では目的が明確に定められ、目標についても数値で明確に定められる。ミチゲーションで重要なことは、目的を明確に持つということである。目的を明確に持っていないと、目標が一層不明確なものになってしまう。目標はある程度の幅をもって示されるため、その不確実性を補うためには、モニタリングを実施するとともに、順応的に管理を行うことが必要となる。
 環境影響評価法では環境保全措置が盛り込まれ、都道府県の条例などでも環境保全措置が導入されつつある。しかしながら、現在までのところ、環境保全措置については知見の不足や技術の未確立などにより、有効に機能していないケースが少なくない。環境保全措置を有効に機能させるためには、生態学と工学が融合した「生態工学」のさらなる発展・構築が急務であると感じられた。

(レポーター:清水建設(株)小松裕幸)

基調講演(2)「道路事業の自然環境影響評価−生態系の評価を中心として−」

講師:
国土交通省国土技術政策総合研究所 道路研究官 大西博文
 道路事業における生態系の調査・予測・評価について、オオタカやタヌキなどの調査事例を交えながら、大西道路研究官より経験を踏まえて考えるところを以下のように解説していただいた。
 環境影響評価のなかで、生態系は他の環境要素と同じように、地域の概況と事業の特性を把握して調査、予測を行い、保全措置を考えて評価をすることになっている。予測は、事業が行われる地域を特徴づける生態系を設定し、注目種を抽出してその注目種に及ぶ影響をみることにより、生態系への影響を把握するものである。生態系の機能として、食物連鎖や生態系ピラミッドとかを考えており、この機能が持続的に維持されるかどうかが、生態系を評価するときの着目点となる。
 生態系の評価にかかわる課題として、地域を特徴づける生態系の設定と、注目種の抽出をどのようにするのかがある。そして、環境保全措置の効果についての知見が不足していることと、保全措置の効果を踏まえた定量的な評価がまだできていないことなどがあげられる。
 まず、地域を特徴づける生態系の設定では、地形・植生の観点から一様でまとまりのある自然環境類型に区分する。典型性の観点からの生態系はその地域によくみられる単一の類型区分とする。特殊性は、その地域において異質な単一の類型区分とする。上位性は、猛禽類や大型哺乳類が利用する異なる複数の類型区分とする。注目種は、ここで設定された生態系において上位性、典型性、特殊性の観点から代表的な種群集を選定するが、たとえば樹林性の鳥類のように幅を持たせて記せば、現地調査で具体的に調査しやすいものを選ぶことができる。
 次に、環境保全措置の効果として、生息場所の消滅、縮小あるいは移動阻害が起きることに対して、地形改変の面積を小さくしたり、代替的な生息基盤を創出して代償をすることで影響の低減が期待できる。ただし、不確実性として代替的な生息基盤が機能するかの問題があり、これからも知見を集積していく必要がある。影響と保全措置を踏まえた定量的な評価では、生態系の構成要素間のバランスが質的に異なったりすると影響が大きいと判断せざるを得ないが、評価の具体的なところはあまり手がついていない。
 生態系の評価にかかわる課題検討の方向性として、いくつかのケーススタディを紹介する。
 一つ目は自然環境類型区分による地域を特徴づける生態系の設定方法である。比較的大きな面積を占める類型区分として谷底平野の水田や人工的な草地があり、水田が丘陵地の中に入り組んだ部分を谷戸地形として類型区分した。
 二つ目はオオタカ調査による生息域の消滅にともなう影響の予測方法である。栃木県宇都宮市の郊外でオオタカの営巣木調査を行い、営巣密度予測モデルを作成した。これは、説明変数に針葉樹林の面積、草地の面積、森林と草地の境界線の長さなどをあてた重回帰分析で、被説明変数を生息密度と関係を持つ行動圏面積とした。また、オオタカの行動圏の分布をラジオテレメトリーで追跡調査した。今後、行動圏内の高利用地域を地形・植生等の生息基盤の面から推測し、その部分を回避するような方向を考えて研究を進めていきたい。
 三つ目として、生息域の分断による影響の予測方法であるが、動物の道路横断施設使用状況調査を行った。その結果、横断施設や周辺の環境により、動物の種類や利用数に変化がみられた。さらに、タヌキの行動圏調査を行い、道路による分断の影響をみているが、動物の利用特性を踏まえた影響軽減のための保全措置をこれから検討していく。

(レポーター:(財)上越環境科学センター武田 徹)

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