
|
|
エコロード、エコパーク、景観工学など非常に幅広い分野で活躍されている亀山先生を講師にお迎えし、生態系のミチゲーションとは何か、そしてその留意点、課題は何かについてわかりやすくご説明していただいた。
ミチゲーションについての講演では、「回避」「低減(最小化)」「代償」といった制度上の主題に関する説明がなされることが多い。しかし、亀山先生はこれらのことには一切触れず、ミチゲーションについて「生き物や生態系のシステムと建設技術のシステムとを調整して、新たなシステムを構築するもの」と説明され、非常に新鮮な印象を受けた。
ミチゲーションは、生態系の仕組みを解明する「生態学」と、土木工学や建築工学などの建設事業にかかわる「工学」の二つの学問から構成されている。「生態学」は生き物の生活のシステムを解明しようとする学問であり、「工学」は人の生活に役立つ技術をシステムとして構築する学問である。両者ともシステムを扱う学問ではあるが、「解明」と「構築」といったスタンスの違いがあり、この点が両者の結合を困難にしている。
この結合を実現させるためには、両方の立場の者が「生き物の生活には非常に未知な部分が多い」ということを認識することが重要となる。
事業を実施する側は、工学的な理論で事業を進めていく。工学とは、一般的には既知の理論で既知の材料を使用するものである。未知の事柄をシステムのなかに入れてしまうとうまく機能しないため、未知なものを排除してモノを組み立てるということが基本姿勢である。一方、生き物についてはわかっていない点が非常に多い。したがって工学には、本来生き物となじみがよいとは言いづらい面があるが、ミチゲーションの場合は、いかに未知の部分が多くても、生き物という存在を排除するわけにはいかないため、どのように付き合うかということが重要となる。すなわち、わからないものをそれとして認めながら、いかに上手く付き合うか、ということがミチゲーションの基本命題である。
ミチゲーションを実施するにあたっては、何のために行うかという「目的」と、何を目指して行うかという「目標」の設定が重要である。生態系の仕組みには未知な部分が非常に多く、人間による影響に対する反応についても得られている知見が少ないため、目標として生き物の具体的な種名や個体数などを示すことは困難である。そのため、目標はある程度の幅をもって示されることになる。それに対し、工学では目的が明確に定められ、目標についても数値で明確に定められる。ミチゲーションで重要なことは、目的を明確に持つということである。目的を明確に持っていないと、目標が一層不明確なものになってしまう。目標はある程度の幅をもって示されるため、その不確実性を補うためには、モニタリングを実施するとともに、順応的に管理を行うことが必要となる。
環境影響評価法では環境保全措置が盛り込まれ、都道府県の条例などでも環境保全措置が導入されつつある。しかしながら、現在までのところ、環境保全措置については知見の不足や技術の未確立などにより、有効に機能していないケースが少なくない。環境保全措置を有効に機能させるためには、生態学と工学が融合した「生態工学」のさらなる発展・構築が急務であると感じられた。
|
|